シェリーがもくれんの異母兄である東堂禅を殺した理由は、蘭子を自身の所に留まらせるためであった。
「あなたも、大事な人を失いたくなくて私を踏みつけた。動機は私と何も変わらないわ。」
「これでも、私が間違っていると言えるの?」
「.......ああ。」
「.......間違ってるよ。あなたは姉さんを守りたくて動いたんじゃない。」
「姉さんはあなたの元を離れて、前に進もうとしていた。それをこんな事してまで阻もうとするのは、あなた1人の身勝手だ。」
「俺は確かにあなたを殺そうとした。それは謝る。だけど、姉だけは真っ当に、死なせてあげてほしい。」
─シェリー、僕が君のお母さんを東堂家に売ったのはね、僕じゃ駄目だったんだ。完璧な存在を産み出すのに、僕は相応しくなかった。
─代わりに僕が選んだのが東堂だ。あの一族は良い.......生まれ持っての求心力に、厳しさと人情が備わっている。
─どうにかあそこと交配できれば、きっと完璧な子供が産まれる。そうなったら僕は何と引き換えにしても子供を手に入れ、研究を再開する。
お父様の計画は、順調に進められていたのね。
私という、失敗作を差し置いて.......。
*****
「蘭子、あなたはここでは10年生きられるかどうか、私の計算が間違っていれば、もっと早い。それでも、ここがいいの?」
「十分よ。私は、ここであなたの分までケジメをつけなければ。」
「そう.......。」
「自分だけ残りの人生を真っ当に生きて、真っ当に死ぬつもりなのね。」
「ずるい.......。」
「え?」
*****
「じゃあね、蘭子、もくれん。」
「せいぜい私を差し置いて早死になさい。」
「ばいばい、シェリー。」
「......。」
「......なんであそこから?」
「シェリーは強いから、エレベーターよりも落下したほうが早いのよ。」
*****
あれから1週間。
すべてが終わったようでいて、まだ片付いていないことが山積している。
シェリーさんの罪は未だ雪がれていない。
俺たちはまだ、あの血生臭い部屋を忘れるのは許されていない。
「.......どうぞ。」
あと少しです!
にほんブログ村