(シムが亡くなったことを示す表現が何度かあります。ご注意ください。)(2回目)
~前回までのあらすじ~
母を失い、身を寄せるところがなくなってしまったもくれん達姉弟。
手を差し伸べてくれたのは心優しい男性。もくれんが"あの人"と呼ぶ彼は、もくれん達を実子同様に養育することを誓った。
しかし2年後、不幸にもその屋敷で大火事が起こった。
「う、嘘でしょ?」
「もうこんな所まで火が.......。」
「火災時の非常口に急ぎましょう!!」
深夜に強い痛みで目を覚ましたら、周囲は真昼のように眩しく、俺とちとせは姉に抱かれていた。
姉は火の粉を振り払って屋敷から脱出したが、外には誰もいない。嘘みたいに静かだった。
「姉さん、ひとまず逃げようよ!そしたら山を下りて近くの人に電話を借りるんだ!」
「.......。」
「姉さんってば!」
「私は行けないわ......。」
「もくれん、ちとせを連れて先に行って!すぐ追いつくから。」
「!?何言って......。」
「私はまだ、ここでやり残したことがある。」
「早く行って!!周りの木に燃え移ったらおしまいよ!」
「なんで!?嫌だよ!一緒に逃げようよ!!」
「─もくれん、あなたは真っ当に生きて、真っ当に死んでね。」
「待って!!!姉さん!!!」
あの時の俺は、姉さんを追いかけられるほど勇気もなくて、腕も足もひどく痛くて、ただ屋敷の前で泣いて消防隊を待った。
気が付いた時には病院のベッドの上で、部屋の外からは残酷にも、俺たちの次の養育先の話が聞こえてきた。その時には姉も、"あの人"ももういない事が確かになってしまった。
その後はずっと、藤田京子の下で暮らした。
たまたま病院にいて俺たちを見かけ、引き取る決意をしたというのが本人から聞いた話。
"あの人"に比べて、京子さんは粗暴だし、厳しかった。
妹のちとせはベタベタに甘やかされたけど、俺はそうじゃなかった。
「京子さん、今いいですか?」
「宿題、分からないところがあるんですけど.......。」
「ゔわ!銃?本物ですか.......!?」
「そうだよ。お前撃ってみろ。」
「え!?嫌ですよ!この平和な世界でこんなもの.......。」
「ははは、何聖人みたいなこと言ってんだ!いいから撃て!お前も漢になるんだ!」
「嫌ですって!」
「分かった、じゃあこれから何撃っても支障ない所に連れて行ってやる。見て覚えろよ!」
「何撃っても支障ない所!?」
本当にめちゃくちゃな人だった。でも、京子さんが生きていた間は退屈することもなかったなぁ.......。
「(えーと東蘭子、東蘭子........あれ、人がいる。)」
今回もお付き合いくださり、ありがとうございました。
続きます!
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