(シムが亡くなったことを示す表現が何度かあります。ご注意ください。)
1年の中に1日でもしっかり意識している日があると、時の早さをより深く実感する。
「今年も無事に祝えそうだよ。」
「誕生日おめでとう、姉さん。」
姉さんは今日で、生きていたら36歳になる。
成人できずにいなくなってしまった姉さん。もう以前ほど悲しくもないけど、今日は特に、あの時の記憶を振り払えない。
寂しくてたまらなかった時期に、彼女ごと封じ込めてきた記憶。そろそろ蓋を開けるべき時だ。
「─あの、住む所を提供していただけるのはありがたいんですが……。」
「私まで、本当によろしいんですか?」
「私は、ちとせともくれんさえ預かっていただければ、お世話にならなくともなんとかやっていけます。この子たちだけでも無事でいてくれたら……。」
「いやぁ、その年でこうも慮ることができるなんて感心するよ!もちろん君もおいで、部屋を用意しているよ。」
「君たちのことはこれから、シェリーとクラウンの血を分けた兄弟と思うよ。」
姉さんが13の時、俺たちの母親は亡くなった。病気を患っていたわけでもないけれど、体が弱かったせいで寿命尽きたように静かに息を引き取った。
あの人に引き取られたのはまさに偶然。ちょうど母が亡くなった時と、あの人がファミリーホーム事業を始めた時期が被ったんだ。
最初はもちろん身構えていたけど、あの人の屋敷を包む空気は優しかった。
2年も経たないうちに、俺たちはれっきとした家族になった。
あの日、たった1度の火事で何もかも失ってしまう時までは。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。
続きます!
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