あらすじ
配偶者を殺したのは、ワイアットに時空移動の能力を与えた別世界の彼であった。
動揺したワイアットは、崖から足を滑らせて転落してしまった。
─僕の配偶者が亡くなってから1年。
あの日と同じく、今日も吹雪だ。
「ああワイアット……1人で生きるのは辛いよ……。」
「……かずひろ。」
「……ワイアット?」
「……まさか。」
「違う、俺は別の……!」
「ワイアット!」
「どうして、いなくなったりしたんだよ……!!」
……まだ時空移動の力が残っていたようだ。俺は、この世界のワイアットじゃない。
それでも今は、この手を離したくない。
結果的に最も残酷な世界線に来てしまったが、別れを選ぶ勇気なんてもうなかった。
これから俺は、死んだワイアットの影として生きるのだろう。それでいい。2人で生きられるのなら、どんな形であっても構わないんだ。
*****
「まったく。どうしてあれほど動揺できるんだ……。」
「分からないのか。人の命を奪っておいて。」
「……っ!」
「ぐ……は……っ!!」
「は、離せ……!!」
「お前も同じ苦しみを味わせてやる。といっても計り知れないだろうな。あいつらの痛みは。」
「少し時空に歪みができた程度でどうしてシムを殺したりできる!?お前には心がないのか!?」
「そんなもの、ある訳ないだろう……!自分の世界線も持たない俺に、お前らの心理など理解できると思うか……!?」
「待って、別世界のワイアット。それ本当?」
「じゃあさ、この世界が春になるとどうなるかは知ってる?」
「そんなもの知らない……。ひとつの地点に長居したことはない!」
「へぇ〜それはもったいない!うちの世界線はここのご近所だから分かるんだけど、ここの青空はきれいだよ。それに暖かい。」
「ここはもう終わるだけの世界線だ。だからさ、崩壊するまでならお前の世界にしてもいいんじゃない?」
「知ってみなよ。配偶者を助けるためだけに身を削ったあいつの心を。」
「……こんなことをしたら、お前の世界線も危ないぞ。」
「いいんだそれは。いつかお前とあいつが報われることを願っているよ。」
ワイアットの旅は、また続いていく。俺がこの時と同じように、ワイアットに手を差し伸べてしまうことによって。
「もう1度、会いたくはないか。」
長くなりましたが、ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
さ、年明けまでふざけますよ!
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